成果

  • スケーラビリティの確保により、予期せぬトラフィックの急増 (3000% 超) にも対応

  • 1,200 万人の市民に向けた主要サービスの利用体験をスムーズに整備

  • 行政機関が 1 年足らずで 5 つのアプリを自主開発できる環境を実現

顧客

概要

  • パート 1

    課題

    : 1,200 万人の市民が、特に危機的状況下でも公共サービスに簡単にアクセスできるようにするため、また企業が政府機関との取引をより円滑に行えるようにするために、この州政府機関は、モダンでモバイル対応かつセキュアな形で、デジタルチャネルの刷新と強化に踏み切る必要があると判断しました。

  • パート 2

    解決策

    HCL ソリューションのスタックを使用して、州政府のデジタルエクスペリエンス (SGDX) を作成し、州の従業員、市民、企業のユーザー体験を向上させました。

  • パート 3

    結果

    州は現在、コンテンツを一元的に集約し、関連情報をさまざまな機関の Web サイトを通じて配信し、部門ごとではなく各ユーザーの業務に合わせてカスタマイズすることができます。

課題

公共サービスへのスムーズなアクセスを実現する

たとえば、市民が健康保険の支援を受けたいときや、企業に政府契約の入札場所を示したりする際になど、どのようなケースであっても、この州政府機関はすべてのやり取りをできる限りわかりやすく、シンプルにすることを目指しています。より高度なセルフサービスを提供するため、同機関ではバラバラに存在していたシステムを統合し、HCL Digital Experience を活用したオンラインポータルと、Volt MX プラットフォーム上に構築された消費者向けアプリケーションによる中央ハブの構築を進めています。

市民が公共サービスにアクセスしやすくなることは、とりわけ危機的な状況下では極めて重要です。また、企業が政府機関や各部門と円滑に取引できるようにすることも同様に求められています。こうした課題を解決するため、この州政府機関はデジタルチャネルの全面的な刷新と強化が不可欠であると判断しました。Volt MX を活用することで、同機関は安全性・正確性・可用性が求められる膨大なデータを、モダンでモバイル対応の形で市民に提供できるようになりました。これまで紙ベースで非効率だった業務をモダナイズし、市民が場所やデバイスを問わず、指先ひとつでサービスにアクセスできるモバイルアプリを開発しました。

同機関は、複数の HCL ソリューションを組み合わせて「State Government Digital Experience (SGDX)」を構築し、州の職員はもちろん、市民や企業にとっても、より優れたユーザー体験を提供する新たな基盤を生み出しました。SGDX の主な目的には、次のものがあります。

  • スケーラブルなプラットフォームの提供: サイトトラフィックが 3,000% 増加しても対応可能であることが証明されたプラットフォーム
  • 市民の手続きの効率化: 重要な情報や公共サービスへの迅速なアクセスを実現
  • 行政機関の能力を強化: リアルタイムで情報を更新できるようにし、透明性と効果を向上

ソリューション/解決策

変革の目標

オンラインサービスやアプリの使用は年々、より深く日常生活に浸透して行っています。消費者も企業も、コミュニケーション、コラボレーション、購入にデジタルチャネルへの依存度を高めており、この州政府機関は、オンラインサービスに対する需要の高まりに対応することが求められています。

この州政府機関は、市民が政府に対して期待するデジタルサービスが、小売業者に対する期待よりも高いことを認識していましたが、公共部門の IT 部門は、一般的に民間企業の IT 部門と比べて、オンラインサービス提供に向けた準備が十分ではありませんでした。

アメリカの多くの州政府と同様に、この州政府も、市民が自身のデバイス上のアプリを通じて、重要な公共サービスにオンラインで手軽にアクセスできる環境を提供しています。以前は、各州の機関がそれぞれ独自にデジタルサービスを提供していました。しかし、市民は目標を達成するために複数の部門にまたがるサービスを利用する必要がある場合が多くありました。その結果、市民は複数のユーザーアカウントを登録しなければならず、手続きが煩雑になっていました。たとえば、失業中であれば、医療、食糧、保育、雇用のサポートを受けるために、4 つの異なるサイトに登録する必要がありました。

この課題解決のため、この種政府機関は中央のアイデンティティとアクセス管理プラットフォームを構築し、シングル・サインオン (SSO) 機能を提供することを決定しました。堅牢な SSO プラットフォームを基盤として、同組織は市民と企業が単一のユーザーアカウントを通じて必要なすべてのサービスにアクセスできるポータルを構築することを目指しました。

また、政府とのあらゆるやりとりをできるだけ簡単にすることが、市民の利益になることも理解していました。市民にとって、デジタルセルフサービスは、事務所まで車で行き、列に並ぶという不便さを解消するだけでなく、運営コストの効率を高め、納税者の税金をより有効に活用することにもつながります。同様に、企業が州の重要なサービスや情報に簡単にアクセスできるようにすることで、より多くの企業を州に誘致し、州全体の雇用の強化にもつながります。この変革を実現するために、同州は HCL と協力しました。組織のニーズに合わせた技術とソリューションの適応に関する経験を持つ HCL は、技術、設計、戦略の専門知識を独自に融合させ、このプロジェクトを成功に導きました。この取り組みでは、政府機関と市民との関係を強化することが重要な要素でした。

新しいデジタルエクスペリエンスの構築
 

目標を達成するため、この州政府機関は、州全体の職員向けポータル「myState」と、多分野に対応した市民向けの新ポータル「State.gov」を構築しました。これらは、State Government Digital Experience (SGDX) を基盤とし、SSO 機能を備えています。同時に、州全体で ID 管理プラットフォームを導入し、全 88 郡およびすべての地方自治体に展開しました。

州全体で 100 以上の異なる機関がサービスを提供している中、SGDX チームは、政府のプログラム、機関、部門に新しいポータルを採用するよう積極的に働きかけました。採用における内部的な障壁を軽減するため、州は HCL Digital Experience プラットフォーム上に一連のアクセラレーターを構築しました。

当時の同州政府機関のリードアーキテクトは、次のように述べています。「州政府では、レガシーのイントラネットサイトを新しいプラットフォームへ移行する際に、必要な技術的作業をできる限り抑えたいと考えていました」。さらに「技術ツールの上にポータルテンプレートを構築することで、技術と変更管理を統合したパッケージを提供できるようになり、移行プロジェクト全体における技術作業の割合を、わずか 3% にまで抑えることができました。その結果は非常に良好で、最近では州内最大級の機関の一つを MyState プラットフォームに 2 か月足らずでオンボードしました。その作業の大半は、データガバナンスと所有権に関する知識移転でした」と付け加えています。

プラットフォームの展開の速さ、それに伴う時間とコストの削減を実感し、さらに口コミでの評価を得たことで、州の機関が SGDX を採用し、移行するのは自然な流れでした。同州は現在、内部エンゲージメントの向上という目標を達成しています。

リードアーキテクトは次のように付け加えています。「導入当初、彼らはユーザーに SGDX への移行を強制することはしないと決めましたが、これはこの規模のプロジェクトでは一般的ではありませんでした。私たちは、プラットフォームの利点を聞いた人々に自ら当社を利用したいと思うように促す方が、最初から全員にポータルの使用を義務付けるよりも、採用を促進する上でより強力な方法になると確信していたからです。そしてそのアプローチは確実に効果を上げています。チームがテストを終える前から、部門は SGDX プラットフォームへの移行を待ち望んでいました」

概念立案からリリースまで、小規模な開発チームは HCL Volt MX プラットフォームを活用し、消費者の使いやすさを重視した堅牢なアプリを、1 年足らずで 5 つ開発・テスト・展開しました。このプラットフォームは AWS クラウド上にホストされており、単一のコードベースであらゆるオペレーティングシステムやデバイスに対応したアプリを提供できる柔軟性を備えています。HCL Volt MX には、再利用可能でカスタマイズ可能な「パーツ」を収録したコンポーネントライブラリーなど、アプリの迅速な開発を支援する豊富な機能が搭載されています。また、市場にある他のローコードソリューションと比較して、コストあたりの価値が高いことも特長です。これらのアプリは iOS および Android のモバイルデバイス上で動作しており、導入以降、毎日利用されています。

これらのアプリは、市民がいつでもどこでも利用できる重要なサービスを提供しており、主な内容は以下のとおりです。

  • 市民の給付金が誤って却下または終了されたかどうか州に聴聞を求める機会を与える法定審問ポータル。
  • 支援命令、支払/受給、支払履歴など、保護者の情報に安全にアクセスできるようにする育児支援アプリ。
  • 労働力数、就業者数、失業率に関連した過去の労働市場統計情報を集約し、ユーザーが生データを簡単に使えるレポートにダウンロードできるようにする労働市場アプリ。
  • 最近一時解雇された有資格労働者を新たに就労させ、立ち直らせることができるよう、組織が彼らを迅速に特定、訓練、配備することを支援する迅速応答アプリ。
  • 市民がフードスタンプに関する情報、地方農家の市場場所、重要な栄養情報にアクセスできるようにする、SNAP (補助的栄養支援プログラム) 関連アプリ。

これらのアプリの開発と運用が成功したことで、同州政府機関は、州内の多くの市民にとって有益となる他のサービスにも、アプリ開発を拡大していこうとしています。

SGDX を使用することで、コストのかかるインフラ投資を回避でき、そのアクセラレーターにより、数か月にわたる技術作業も不要になります。その結果、すでに 1,800 万ドル以上のコスト回避を実現し、納税者に価値を提供しながら、デジタルサービスの強化を進めることができています。

— 州政府代表者のコメントより

結果

モバイルアプリにより、市民向けサービスの幅を拡大

SGDX チームは、州内の内部関係者が SGDX を迅速に導入できるよう支援するツールを提供することで、州全体の市民や企業に向けてシームレスなデジタルサービスを展開しています。また、DX を基盤とするこの環境に加え、家族向けの重要なサービスの幅を広げる 5 つの Volt MX モバイルアプリを、市民に提供することにも成功しました。

世界的なパンデミックの現状を踏まえ、同州政府チームは、SGDX サイトインスタンスに寄せられるリクエストの種類と量を分析し、必要に応じてサービスを調整し、市民のニーズに可能な限り迅速に対応できるよう努めています。分析の結果、チームはパンデミック前の期間に 1 時間あたり 20 万件だったビジネスクリティカルなリクエストの流入率が、1 時間あたり 600 万件に増加したことを確認しました。これは 3,000% の増加であり、一切のサービス中断なしに達成されました。これが示しているのは、HCL Digital Experience のスケールアウト能力、信頼性、そして運用チームが州民に最適なサービスを提供するために必要な情報を提供できる能力の驚くべき力です。

「レガシーイントラネットを置き換える場合でも、ゼロから構築する場合でも、迅速に移行するために必要なものはすべて揃っています」とリードアーキテクトは続けます。「SGDX プラットフォームを使用することで、コストのかかるインフラ投資を回避でき、そのアクセラレーターにより、数か月に及ぶ技術的作業が不要になります。その結果、約 1,800 万ドルのコスト削減を達成し、納税者に価値を提供しながらデジタルサービスを強化することができています」

SGDX への移行を進める機関が増える中、チームは各部門から成功事例を聞くようになってきました。農業省は、SGDX に移行した最初の機関の 1 つです。過去、農業省は、一般向けウェブサイトの更新を IT チームに依存していたため、公共に影響を及ぼすインシデントに迅速に対応することが極めて困難でした。農業省が SGDX を導入する前は、ほとんどのコンテンツ更新で、専門知識を持つ担当者が IT 部門にチケットを発行しなければなりませんでした。HCL Digital Experience を導入して以来、部門内で Web サイト更新に関するサポートチケットを提出する必要は一切なくなりました。農業省は、コミュニケーションチームにコンテンツの管理権限を完全に委譲しました。実際、先日の州フェアでは、農業省の職員がモバイル端末からリアルタイムで Web サイトを更新し、同じイベントに参加していた Associated Press の記者よりも迅速に対応しました。

農業省のある部門は、HCL ソリューションを活用したコンテンツ管理のアプローチを強化することで、サイト内のコンテンツ検索に関するサポートコールを 80% 削減したと報告しています。同様に、HCL Digital Experience を活用してセルフサービス機能を提供した保健省では、パスワードのリセットなどに関するヘルプデスクへの問い合わせが 40% 削減され、年間 US$75,000 のコスト削減が見込まれています。この成功事例は、他の部門がセルフサービス機会を創出するとともに、業務のコスト効率化を実現している一例です。

HCL によって支えられたデジタルエクスペリエンスを通じて、この州政府は変革の目標達成に向けて、確かな基盤を築いています。Volt MX プラットフォームは、雇用・家族省が一般向けに提供する 5 つのアプリを容易に構築できる環境を提供しました。なかでも特に重要なのが、「Rapid Response アプリ」と「食料支援プログラム情報アプリ」の 2 つです。Rapid Response アプリは、解雇された労働者の再配置や再訓練を州が支援するためのものです。食料支援プログラム情報アプリは、SNAP (補助的栄養支援プログラム) に関する情報、フードスタンプの利用案内、ファーマーズマーケットの所在地、栄養に関するその他の重要情報などを市民にわかりやすく提供するために活用されています。

同州は、関連情報を一元的に集約し、部門ごとではなく各ユーザーの業務に合わせて、さまざまな機関のウェブサイトを通じて情報を配信できるようになったため、必要な情報を人々に提供することがこれまで以上に容易になり、デジタルサービスに対する高い期待に応えることができるようになりました。

リードアーキテクトは次のように結論付けています。「より多くの政府プログラム、機関、部門が SGDX プログラムを採用する中で、同州では、州民が必要なサービスにこれまで以上に簡単にアクセスできるようになったことを実感しています。そして、州政府は、HCL との協力関係を継続できることを楽しみにしています」

会社について

米国中西部に本拠を置くこの州政府機関は、教育、医療、交通などの公共サービスを市民に提供する役割を担っています。

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